【第1種放射線取扱主任者試験】令和6年度 実務問2の計算問題をわかりやすく解説

令和6年度の第1種放射線取扱主任者試験、実務問2の計算問題を、計算過程を示しながら丁寧に解説します。

本記事の問題・正答は原子力安全技術センター公式ページ記載内容を引用しています。

試験問題と正答|公益財団法人 原子力安全技術センター

暗記に時間を割きたい方、仕事や国家試験の勉強で忙しい方、時間を節約したい方などにご活用いただければ幸いです。

計算問題(令和6年度 実務 問2 Ⅱ I(アイ))解説

問題

「令和6年度 第1種放射線取扱主任者試験 実務 問2 Ⅱ」の問題文から、計算問題I(アイ)の解説に必要な内容を要約します。

※以下の問題文は、公益財団法人原子力安全技術センター公式ページより要約・抜粋しています。元の設問内容は公式資料をご参照ください。

問題 41Ar(半減期1.83h)が生成される。41Arの空気中放射能濃度が、法令で定める空気中濃度限度の1.4倍である場合、何時間経過後に濃度限度を下回るか。

出典:試験問題と正答|公益財団法人 原子力安全技術センター

計算過程

※手順が多いので番号を振りますが、順番が前後しても大丈夫な部分もあります。

濃度限度を下回る時間\(t\)時間後と置きます。

法令で定める空気中濃度限度\(A\)41Arの壊変定数\(\lambda \)とします。

「壊変定数」とは、放射性同位元素が単位時間あたりに崩壊する確率を表し、数値が大きいほど短時間で放射能が減少することを示します。

生成された41Arの空気中放射能濃度 \( 1.4A \)。これがt時間後に\(A\)になるので、公式から、

$$ \ A = 1.4 A e^{-\lambda t} \ $$

式を整理するため、両辺を\(A\)で割って

$$ \ 1 = 1.4e^{-λt} \ $$

③\( 1.4 \approx \sqrt{2}=2^{\frac{1}{2}} \)を用いて書き換えると

$$ \ 1 \approx 2^{\frac{1}{2}} e^{-λt} \ $$

両辺を\(2^{\frac{1}{2}}\)で割って

$$ \ 2^{-\frac{1}{2}} \approx e^{-λt} \ $$

④ここで、両辺の自然対数をとって指数関数の形を解消します。

対数は複雑な指数計算を扱いやすくするための数学的ツールです。

$$ \log_e 2^{-\frac{1}{2}} \approx \log_e e^{-\lambda t} $$

対数が苦手な方へ

ここで使う対数の基本を簡単に整理しておきます。

・ 対数の性質

\( \log_a a = 1 \)(\(a^1 = a\)だから)

\( \log_a x^c = c \log_a x \quad \)(指数は前に出せる

・自然対数ln:底が\(e\)(約2.718)の対数を自然対数といい、\( \log_e x =\ln ⁡x \)と書きます。

対数についてもっと見直したい方は「まとめて覚えておきたい対数の基本ルール」へジャンプ!

⑤対数の性質から\( \quad \log_e 2^{-\frac{1}{2}} = -\frac{1}{2} \log_e 2 = -\frac{1}{2} \ln 2\)、\( \log_e e^{-\lambda t} = -\lambda t \log_e e = -\lambda t \) と変形できますので、

$$ -\frac{1}{2} \ln 2 \approx -\lambda t $$

両辺のマイナスを打ち消すため、両辺に\(-1\)を掛けて

$$ \frac{1}{2} \ln 2 \approx \lambda t $$

⑥ここで、壊変定数\(\lambda \)の公式\( \lambda = \frac{\ln 2}{\text{半減期}} \)を用いて

$$ \frac{1}{2} \ln 2 \approx \frac{ \ln 2 }{ \mathrm{半減期} } t $$

両辺を\( \ln 2\)で割って、

$$ \frac{1}{2} \approx \frac{t}{ \mathrm{半減期} } $$

41Arの半減期は1.83hですので、

\[ \frac{1}{2} \approx \frac{t}{1.83} \]

わかりやすいよう、tを左辺にもってきて

\[ t \approx 0.915 \]

よって答えは約0.915時間です。

解答の選択肢に0.92がありますので、これを選択します。

使った公式と必要知識

公式

・ある放射性物質の放射能を\(A\)、壊変定数を\(\lambda \)、\(t\)秒後の放射能を\(A_t\)とすると

\( A = A_t e^{-\lambda t} \)

・ある放射性物質の壊変定数

\( \text{壊変定数} = \frac{\ln 2}{\text{半減期}} \)

数値・表記

・\( \sqrt{a}=a^{1/2} \)

・\( \sqrt{2} \approx 1.4 \)

・\( \log_e 2 \) = \( \ln 2 \)

まとめて覚えておきたい対数の基本ルール

・対数の定義:\( \log_a b = c \quad \)とは、\( \quad a^c = b \quad \)を意味します。例えば、\( \log_2 8 = 3 \quad \)は\( \quad 2^3 = 8 \quad \)だからです。

・自然対数ln:底が\(e\)(約2.718)の対数を自然対数といい、\( \log_⁡e x = \ln ⁡x \)と書きます。

・対数の性質

\( \log_a a = 1 \)(\(a^1 = a\)だから)

\( \log_a xy = \log_a x + \log_a y \quad \)(積の対数は和

\( \log_a \frac{x}{y} = \log_a x – \log_a y \quad \)(商の対数は差

\( \log_a x^c = c \log_a x \quad \)(指数は前に出せる

最後に

私は、第1種放射線取扱主任者試験の勉強をした際、計算問題が苦手すぎて、挫折しそうになりました。

数学や物理の数値や公式をたくさん暗記しなければ歯が立ちませんし、計算過程が長いものは、解説を読んでもよくわからないことが多かったからです。

勉強にとても時間をかけたのに、あまり得点に繋がらなかったと感じています。

しかし、第1種取扱主任者試験は、各課目で5割以上を取らなければならず、計算問題を完全に切り捨てるのも怖いと思っています。

この記事では、理解に時間がかかる部分を省略せず、過程を明示して「なぜそうなるか」が見えるよう工夫しました。

勉強時間を節約しながら、少しでも安心して解法を身につけられる手助けになれば幸いです。

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本記事に掲載している問題および正答は、公益財団法人 原子力安全技術センターの公式ページに掲載されているものを引用しております。

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