この記事は、2024年に「業務拡大に伴う統一講習会(以下「統一講習会」)」を受けた現役放射線技師が、次の内容を簡潔にまとめています。
- 統一講習会とは?
- 統一講習会の内容、体験談、感想
- 実技や試験の難易度、講習会の雰囲気
- 受講料
- 申し込み方法
- 受講した感想と参加を迷っている方へのメッセージ
お役立ていただければ幸いです。
統一講習会とは
2014年に「診療放射線技師法」が改正され、放射線技師の業務が拡大しました。
これらの業務を、安全性を担保しつつ行うため、公益社団法人 日本診療放射線技師会(以下「技師会」)が診療放射線技師を対象として、開催している講習会が「統一講習会」です。
統一講習会の受講は法的な義務ではありません。ただし、2014年の診療放射線技師法改正により拡大された新しい業務に関して、これらの業務を安全に行うための必要な教育を受けていない技師は、医療安全の観点から当講習会を受けることが強く推奨されています。つまり、受講は努力義務にあたり、必須ではありませんが、拡大された業務に対応するための安全確保のためには受講を検討することが望ましいとされています。
出典
診療放射線技師法及び臨床検査技師等に関する法律の一部改正の施行等について〔臨床検査技師等に関する法律〕|厚生労働省
診療放射線技師法施行規則及び臨床検査技師等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布について(厚生労働省医政局長:H27.2.17)|公益社団法人 全日本病院協会
統一講習会について詳しく知りたい方は、よろしければこちらの記事もお読みください。
統一講習会は、全国各地で年に数回開催されています。
2025年度開催予定など、最新の開催予定や場所等については、技師会の公式サイトおよび各都道府県の診療放射線技師会の公式サイトをご確認ください。
統一講習会の内容
統一講習会の内容は、以下の通りです。
- CTやMRI等の造影検査で静脈に造影剤を注入する際に、看護師や医師にルートを確保してもらった後、自動注入装置(手押しは対象外)を操作して造影剤の注入と抜針・止血をする。
- 下部消化管造影検査(注腸X線検査)で肛門にカテーテルを挿入し、医師に確認のうえ造影剤や空気(場合によってはCO2も可)を注入する。
- 画像誘導放射線治療(IGRT)で、肛門にカテーテルを挿入し、空気を吸引する。
重要なポイント
- これらの業務拡大は医師・看護師の負担軽減が目的です。
- 放射線技師は必ず医師・看護師の指導に従い、何かあれば速やかに報告・連絡・共有・相談してください。
出典
診療放射線技師法及び臨床検査技師等に関する法律の一部改正の施行等について〔臨床検査技師等に関する法律〕|厚生労働省
診療放射線技師法施行規則及び臨床検査技師等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布について(厚生労働省医政局長:H27.2.17)|公益社団法人 全日本病院協会
2日間の流れ、体験談、感想
統一講習会は2日にわたって開催されます。
1日目は主に講義、2日目は午前中がDVD講義中心、午後が実習中心となっていて、終了後に確認試験(選択式の筆記試験)がありました。
確認試験の結果は当日、すぐに採点され、その場で結果発表がありました。
講義の内容
静脈への造影剤注入・抜針・止血、下部消化管造影検査(注腸X線検査)、画像誘導放射線治療(IGRT)、法令など
実習の内容
静脈への造影剤注入・抜針・止血、下部消化管造影検査(注腸X線検査)、画像誘導放射線治療(IGRT)、一次救命措置(BLS)など
体験の感想
- 講義はわかりやすいDVD教材が使われています。今回の業務拡大範囲のみに限らず、解剖や装置についてなど、検査の基礎から順序立てて、丁寧に説明してくれています。
- 私が受講した際は、実習は少人数で行ったため、初めてでも講師のサポートを受けながら安心して取り組めます。
- 質問しやすい雰囲気です。
- 時間管理が重視されており、受講者にはスムーズな進行への協力が求められましたが、進行を急かされるような圧迫感はなく、落ち着いた雰囲気で学ぶことができました。
- 私が特に印象に残っているのは一次救命措置の実習で、人間の上半身モデルとAEDを使い、演習を行いました。一度にAEDを使える人数が限られているため、受講者は7~8人のグループに分かれ、3人ずつのチームで実施しました。チーム内では心臓マッサージ担当、人工呼吸担当、助けを呼ぶ担当など役割を交代で行い、実際の救命現場に近い状況で協力しながら訓練を行いました。
- 持ち込み禁止の筆記試験(選択式)はありますが、多くの参加者が無理なく合格していると聞いています。私が受講した際は数十人が参加していましたが、全員合格でした。
なお、講義・実習内容等は、私が講習会に参加した際の体験をもとにしており、開催地や年度によって一部異なることがあります。(一次救命措置が省略されるなど。)受講を検討される方は技師会公式サイトや、各都道府県の技師会公式サイトで最新情報を確認し、安心して申し込みを進めることをおすすめします。私が受講した際は、開催日の数日前に届いた案内メールに、講習会のプログラムが添付されていました。
受講人数と合格率
統一講習会の受講率について、過去の日本診療放射線技師会誌(2021年、vol68 no.823)の巻頭言には「全会員の60パーセントを超える受講実績があり、2021年度以降も継続して講習会を開催する方針である」との記載があります。
出典:告示研修で担う新たなる責務 富田博信 副会長|公益社団法人 日本診療放射線技師会
また、2020年3月時点では診療放射線技師会会員の60%以上が統一講習会を受講し、非会員も含め約20,000人もの技師が修了証を受け取っていたと、かつて日本診療放射線技師会の公式ホームページに記載されていました(現在は削除済み)。
一方で、受講率は会員の過半数を超えてはいるものの100%には達しておらず、まだ全員が受講しているわけではありません。2021年以降も新たに受講者数が増えていることを踏まえると、今後さらに多くの技師が受講する可能性があります。
私自身は、こうした数字を見て安心して受講を決めました。
このように、統一講習会は多くの診療放射線技師に受講されている一方で、個々の状況により受講していない技師も一定数いるという現状があります。情報については常に最新の公式発表を確認することが重要です。
統一講習会の実習と試験、実際の難易度と雰囲気は?
統一講習会には実習や持込禁止の筆記試験がありますが、心配しすぎる必要はありません。
個人の感想ではありますが、実習は丁寧な説明や実演があり、普段対象業務にあまり携わっていない技師でも十分対応できると感じました。
DVD講義も器具の名称や消化管の解剖など基礎から簡潔に解説され、「ここは大事」というポイントも講師が明示してくれるため、安心して学べます。
合格率など公表データは見当たりませんが、多くの放射線技師が受講・修了しており、難易度は決して高すぎません。
実習は数時間で、抜針や肛門チューブ挿入、BLS(一次救命処置)などの手技を一通り体験します。
失敗しても厳しく叱られることはなく、必要に応じて優しく指導があるため安心して取り組めます。
質問もしやすい雰囲気でした。
実習進行の妨げや他参加者への迷惑行為など、特別なトラブルがなければ、誰でも無理なく修了できる内容なので、過度に恐れる必要はありません。
服装・持ち物
私の場合、講習会の数日前に会場や当日のプログラムについて案内メールが届きました。
そのメールには、当日の服装や持ち物について、次のような内容が記載されていました。
- コロナ対策のためマスクの着用を推奨
- 実習があるので動きやすい服装で参加
- 確認試験があるため筆記用具を持参
また、私の会場ではロッカー等の施設はありませんでしたので、貴重品は常に身につけるか、持ちこまないほうが安心かもしれません。
統一講習会の受講料
統一講習会の受講料は概ね60,000円(技師会の会員は15,000円)ですが、開催年度や都道府県によって、少し異なる場合もあるそうです。
また、一部の講習会を受けていれば、安くなる場合もあります。
詳細は放射線技師会の公式サイトか、各都道府県の技師会公式サイトでご確認ください。
統一講習会の申し込み方法
統一講習会の申し込み方法を詳しくご案内します。私自身、申し込みの際に検索などで少しつまずいた部分があったので、参考になれば幸いです。
①JARTの会員情報システムにログインします。
②マイページの下部にある「イベント参加のお申込み」をクリック。
③「イベント名」の欄に「統一講習会」と入力し、右下の青い「検索」ボタンを押します。
④「業務拡大に伴う統一講習会(開催地)開催期間」というイベント名で検索結果が表示されます。開催地、開催期間、申込み受付期間を確認してください。
(*イベント名をクリックすると詳細が確認できますが、ブラウザの戻るボタンで戻れなくなることがあるので注意してください。)
⑤申込み受付期間内に、該当イベント名の左側にある丸印をクリックして選択します(青いチェックマークが付きます)。
⑥画面右下の青い「次へ」ボタンを押します。
⑦続けて画面右下の青い「申込開始」ボタンを押し、あとは画面の指示に従って手続きを進めてください。
なお、JART(日本診療放射線技師会)の会員でなくても、診療放射線技師免許をお持ちであれば申し込みは可能です。(JART情報システムの利用登録は必要です。)
ただし、非会員の場合は受講料が会員より高く設定されています(都道府県ごとの差異や、年度でも異なる場合がありますが、概ね会員15,000円、非会員60,000円程度)。
ご不明点は「よくあるご質問|公益社団法人 日本診療放射線技師会」もご参照ください。
まとめ
「業務拡大に伴う統一講習会」は、診療放射線技師が拡大された業務を安全に行うために、2日間で必要な知識と技術を学ぶ講習会です。
内容はDVD講義・実技で構成され、BLS(一次救命処置)などの実習も含まれています。
受講料は会員15,000円、非会員60,000円が目安で、申し込みはJARTの会員情報システムから行います。
普段担当していない検査でも無理なく修了できる内容であり、業務の幅を広げる良い機会です。
受講した感想と参加を迷っている方へのメッセージ
今回この記事を書こうと思ったのは、自分が統一講習会について調べようとインターネットで検索をかけた際、ヒットの少なさに驚いたことがきっかけでした。
講習を受けるか迷う方の参考になればと思い、自分が講習会を受けようと決心するまでに調べた情報、調べきれなかった情報を、1つの記事にまとめました。
職場では、受講済みの方もいれば、あまり関心のない方もいて、特に50代以上のベテラン技師は定年を意識してか積極的ではないように感じます。受講のきっかけもさまざまで、上司の指示や職場の雰囲気で左右されることもあります。
私自身も最近になってようやく受講しましたが、質の良い講習会で、受けてよかったと感じています。
もし土日にお休みが取れるなら、敷居は決して高くありません。
皆さんの参考になれば幸いです。
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